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文章教室・錬成コース 推薦作品3

文章教室・錬成コースの推薦作(課題「ほのぼの」800字)より、佐々木恭子さんの作品をご紹介します。
担当講師の推薦の評もご覧ください。

「クリスマスイブに」 佐々木恭子氏作

(課題「ほのぼの」)

 クリスマスイブの夕方五時、私たち聖歌隊は、駅前で恒例のキャロリングをするために教会の玄関を出ようとしていた。

 その時、小学一年生のさくらちゃんがお母さんと走ってきた。「どうしても一緒に歌いたいというので、加えてやってください。私は下の子が風邪気なので、よろしくお願いします」。お母さんは挨拶もそこそこに、また走り帰っていった。

 京王線C駅南口の駅前は、小さな広場になっている。工事中のフェンスを背にして、二十人は広場の方を向いて並んだ。ペンライトを持ち、指揮者の合図で歌い始める。背筋を伸ばしていつもより大きな声を張り上げた。雑踏にハーモニーが吸い込まれていく。

 駅の階段を下りてくる人たちは、ほとんどがチラッと見るだけでそのまま行き過ぎてしまう。でも、前列に立ってひたむきに歌っているかわいいさくらちゃんに、表情を崩していく人もいる。「きよしこの夜」を歌い始めたら、数人が足を止めた。欧米系の外国人男性がカメラを向けてきた。

 調子に乗って私たちは、六曲をもう一回くり返して歌った。立ち止まる人が増え、一緒に口ずさむ人もいる。さくらちゃんも頭でリズムをとりながら、声が大きくなっていく。

 教会に戻って、冷えた体をストーブで暖め、食事係の方たちが用意してくれた温かいお味噌汁とおにぎりを頂いた。さくらちゃんも一緒に頬張りながら、「お父さんが帰ったら、お母さん来てくれるの」と嬉しそうに言う。

 イブ礼拝は七時から。六時半過ぎには、礼拝堂に人が次々集まってきた。さくらちゃんは後方の椅子に座って、しきりに玄関を気にしている。隣にコートを置いて、お母さんの席をしっかり確保して待っている。 開始寸前に、お母さんが駆け込んできた。さくらちゃんの顔がパッと輝き、とび跳ねて迎えに出た。手をつないで母子が椅子に座ると同時に、オルガンの前奏が響いた。

推薦の評

添削講師 高橋 俊一氏

 課題の「ほのぼの」の言葉をタイトルにも文中にも使うことなく、それでいてほのぼのとした話を書きました。主役の「さくらちゃん」だけでなく、脇役ともいえる人たちや駅前風景の描写が実によくできています。
イブの雰囲気を力まずに出し、しかもどれも魅力的です。暮れのあわただしささえ、楽しく思えます。
ディテールまでを過不足なく書きこなした点で、立派な秀作です。

 このほか、柴田昌代さんもすばらしい出来栄えで、どちらを推薦するか迷ったぐらいです。丹羽ふじ子さんや服部京子さんも良い雰囲気を出していらっしゃいました。