マーティさん・茂木さん対談 音楽も言葉も「固定観念や恥を捨てよ!」 | お知らせ | 朝日カルチャーセンター
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マーティさん・茂木さん対談 音楽も言葉も「固定観念や恥を捨てよ!」 講座レポートが Asahi Weekly2月7日号に掲載されました

投稿日 : 2016年02月17日

世界的に知られるミュージシャンのマーティ・フリードマンさん。
朝日ウイークリーの毎月第2週の「マーティにまかせろ Bring it on!」を担当しています。そのマーティさんが1月19日、東京都内のイベントで、脳科学者の茂木健一郎さんと対談しました。テーマは「ジャンルを超えろ」。2人は音楽の創造も、言葉の習得も、固定観念や恥の感覚を捨てれば、可能性が大きく広がると力説しました。(安東建/朝日新聞社)

音楽の融合を楽しもう!

 ロックのなかでもヘビーメタル(ヘビメタ)というジャンルを究めたマーティさんは、演歌やJ-POP に魅せられ、2004年から日本に拠点を移しました。茂木さんから、日本で聴く音楽について問われたマーティさんは「metamorphosis(魔力による変質)」という言葉を持ち出しました。

 「今の日本で一番はやっているのはアイドル音楽。でも実は、そのなかにヘビメタの味がたっぷり入っている。これが、metamorphosis。ヘビメタが変形し、ウイルスみたいに、ルール違反のジャンルに入っているんですね」

 茂木さんが「ヘビメタのアメリカ人が今、日本語でトークしている。何があったんですか」と聞くと、マーティさんはこう答えました。

 「ボクには邦楽しか聴かない時期があったんですよ。90年代後半のJ-POP。毎晩ヘビメタやって、夜はホテルで邦楽のCDを聞いていた。バンドのメンバーは『マーティ、おかしいよ』って言うんだ。でも、つんくさんがプロデュースした音楽を聴いたら、ガイジンだってわかるんですよ。つんく天才!ってね」

 「邦楽」という言葉から、茂木さんは、洋楽、邦楽というジャンル分けに疑問を投げかけます。マーティさんは「日本だけですよ。そうやって分けるのは。邦楽ファンは洋楽にまったく興味がない。一方、洋楽ファンは洋楽しか聴かない。でも全部の音楽を楽しんでほしい。心をオープンにすれば、いい音楽はいいもんだよ」。固定観念を捨て、他のジャンルに飛び込んでみることを勧めます。

 日本の音楽にほれ込んだマーティさんは「大好きな音楽に囲まれるってパラダイス。日本にいると、日本語を学ばないといけない。アメリカにいれば、そんな必要はないけど、今もずっと学んでいられるのがうれしい」と続けました。

「日本の音楽や文化を追い、日本で暮らすことはcrazy dream と言われた」と話すマーティさん

 茂木さんが今度は「transition(変遷・転調)」という言葉を使い、「ヘビメタやっていた人が日本に移住して、(08年の)紅白歌合戦にまで出ちゃった。漢字は読めるんですか」と突っ込みます。

 「もちろん読めます。でも、日本人と同じように携帯を使いまくっているから…(笑い)。鉛筆で書くのは苦手」とマーティさん。「石川さゆりさんと一緒に紅白に出ました。AKB48とも武道館で共演しました。そのジャンルを超える幅広さが、自分にとってはパラダイス。日本は夢がかなう場所ですよ」

 茂木さんは「(American dream ならぬ)Japanese dream ですね」と軽妙に応じました。「夢」のつながりで言うと、マーティさんはこんなふうにも語りました。

 「人にはみんな夢があるはずです。事情があって、今は非現実的かもしれないけど…。ボクはね、天才じゃないですよ。高校をギリギリ卒業したヤツだから。30代後半で、日本語なんて全然知らなかった。そのボクが日本の音楽に恋をした。好きになったら追うべきです。だからボクは日本にいる。ボクの音楽は、これから日本で生まれるんですよ」

茂木さんがもっぱらツッコミ役になり、マーティさんがなめらかな日本語で、体験や思いを話した。テーマは多岐にわたった

「恥知らず」になれ!

 会場のお客さんとのやり取りもたくさんありました。そのなかで、英語の習得についての質問がありました。

 「ロンドン出身の同僚がいるので、会議では英語を使わなければならない。非常に恥ずかしく、通じなかったらどうしよう、と不安にもなります。マーティさん、日本語は難しくないですか?」

 マーティさんがすかさず答えました。

 「一番大事なことは『恥知らず』になることです。ボクも今、茂木さんの前で間違ってばかり。間違えるのは悪いことではない。女の子なら、かわいい!って言ってくれるし。やらないほうが恥ずかしいですよ」

 茂木さんもうなずきます。「子どもには、恥なんてないじゃないですか。だから言葉が上達する。恥ずかしいと思ったら上達しないよね」

 マーティさんは、日本の環境で英語を身につける難しさを理解したうえで、こう続けました。

 「いくら英語の教育を受けても、自信がない。ふだん使う必要性がゼロだからね。でも、必要性が出てきたら、とにかく会話が進むようにがんばってみる。みんな応援してくれるよ」

 日本人の多くが、マーティさんの日本語習得を応援してくれたことを引き合いに出し、英語の勉強に励む人たちにエールを送りました。

2人の軽妙なトークに、会場はたびたび笑いに包まれた

この対談は、朝日カルチャーセンター新宿教室が企画、主催しました。

【写真】場所:1月19日、東京・西新宿のライブハウス 撮影:朝日ウイークリー編集チーム・抦﨑太郎

Marty Friedman

マーティ・フリードマン 米ワシントン出身。ギタリストとして活動した後、1990年、ヘビーメタルバンドMEGADETH(メガデス)に加入。世界で1300万枚を超すアルバムを売り上げた。ツアーで来日を重ねるうち、演歌やJ-POPに魅せられ、バンド脱退後に、日本語の勉強を開始。2004年から日本に拠点を移し、NHKや民放の番組に多数出演中。

茂木 健一郎

もぎ・けんいちろう 東京大学の2学部を卒業後、東京大大学院物理学専攻課程を修了。専門は脳科学、認知科学。理化学研究所などを経て、ソニーコンピュータサイエンス研究所にも所属。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとし、脳と心の関係を研究するとともに、文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。「脳と仮想」(小林秀雄賞)など著書多数。

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