アングロ・サクソン美術 大陸への影響

  • 越 宏一(東京芸術大学名誉教授)
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 前期の「アングロ・サクソン美術(VI)の大陸への影響1」は、アングロ・サクソンのキリスト教布教の最も重要な拠点の一つ、エヒテルナハ修道院で制作された8世紀第2四半期の『トリーアの福音書』を考察して終えた。今期は、アングロ・サクソンの影響の中心地としてエヒテルナハと並んで注目に値するザルツブルクの8世紀末の写本画(『クートブレヒトの福音書』等)、および、8世紀後半の金工作品を取り上げる。
 写本画においては、大陸に移植されたばかりのインシュラー様式はすぐさま、南方からの影響によってヘゲモニーを脅かされたけれど、アングロ・サクソンの美的趣味が長い間、他を寄せ付けなっかた芸術領域があった。金工芸術である。8世紀ドイツの金工作品はどれも同じストーリーを物語る。それらは、どうみてもイギリスからの輸入品であるか、あるいは、アングロ・サクソンの技法・伝統の訓練を受けた芸術家がドイツで制作した作品のどちらかである。
 後者の代表作が《タシロの聖杯》である。オーストリアのクレムスミュンスター修道院が誇るこの作品は、バイエルン公国の大都市ザルツブルグを中心とする、8世紀のインシュラー的ミリューが生み出した金工芸術の一大傑作であり、その図像はカロリング朝ルネサンスのプレリュードとして独創的である。その点を解き明かしたい。  (講師・記)

※右図は《タシロの聖杯》(部分) 福音書記者マルコとその象徴(獅子) 777年頃/恐らくザルツブルク

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日程
2019/10/19, 11/16, 12/21
曜日・時間
第3 土曜 13:30~15:00
回数
3回
受講料(税込)
会員 9,900円 一般 11,880円
持ち物など
講座終了後、ご希望の方に実費でカラーコピー資料をお渡しします。
その他
教室は変わる場合があります。10階と11階の変更もあります。当日の案内表示をご確認ください。

講師詳細

越 宏一(コシ コウイチ)
 1942年生まれ。東京芸術大学美術学部卒業。ウィーン大学留学、博士号取得。ヨーロッパ中世美術史専攻。東京芸術大学名誉教授。1991年シーボルト賞受賞。著書に『ライヒェナウの初期中世壁画』(独文)、『ヨーロッパ中世美術講義』『風景画の出現』(岩波書店)、『ラヴェンナのモザイク芸術』(中央公論美術出版)など。