「力」の起源を求めて 宇宙に潜む対称性

  • 松浦 壮(慶応義塾大学教授)
講師詳細

 私たちの世界は素粒子から出来ています。例えば身の周りの物体を構成する原子の正体は、原子核とその周りを回る電子です。そして、原子核は陽子と中性子で出来ていますが、その陽子と中性子もまた、クォークと呼ばれる素粒子が3個結びついて出来ています。なので、非常に大雑把に言うなら、全ての物質は電子とクォークが集まったものと言っても構いません。
 ですがこれは、「物体の成り立ち」という意味では話の半分に過ぎません。砂粒をいくら集めても彫像にはならないように、材料である素粒子をいくら集めても、「力」が働いてそれらが適切に結びつかない限り、物体が形作られることはないからです。
物体の成り立ちを理解したければ、その構成要素を結びつける「力」を支配する理を理解する必要がある、ということです。これは、「この世にどうして力があるのだろう?」
という素朴な問いの探求に他なりません。
 この探求を続けた人類が20世紀に至った答えは、「この世に力があるのは、自然界にゲージ対称性があるからである」 という驚くべきものです。この講座では、このシンプルかつ深い理解に至った経緯を、一歩一歩辿りたいと思います。
 身の周りにある「力」を出発点に、その正体をひとつひとつ辿りながら「ゲージ原理」の理解に至るのが目標です。その道のりには、力の正体だけでなく、電気と磁気の働き、対称性と保存量の関係、ゲージ原理と言った、現代の物理学を根底で支える基本的な概念が次々に登場し、更には、時空が秘めている豊かな内部構造をも垣間見せてくれます。
 対称性は、現代物理学の中核のひとつです。全3回という時間をフルに使って、 その妙味を味わっていきましょう。 (講師・記)


<各回のテーマ予定>
4月:「力」の正体を求めて ~電磁気力と対称性~
日常的に目にする「力」について考えながら、その正体の大部分が電磁気力である事を説明します。
電磁気力の中に意外な形で相対性理論と対称性が隠れている様子を眺めながら、電磁気力が、実は光によって媒介されているという驚きの事実を解説します。

5月:対称性と保存量 ~ネーターの定理~
この回は、「対称性」について詳しく解説します。
物事が「対称」であるとはどういう事か、それをどのように表現したら良いのか、と言った問題を、具体例を交えながら色々な方向から眺めて行きます。
電磁気力に登場する「(4次元)電流」が、実は対称性の産物であるという理解に辿り着くのが目標です。

6月:ゲージ対称性と力 ~ゲージ原理と相互作用~
歴史的には、電磁気力が最初に見つかり、その中に対称性が見つかりましたが、現代の理解はその逆、すなわち、対称性が本質で、電磁気力はその結果です。この回はその仕組みを解説します。
そして、この世に存在する他の種類の力が全て「ゲージ相互作用」である事を解説し、素粒子物理学の金字塔である「素粒子標準模型」の概要をご紹介してお話を締めくくる予定です。

残席わずか
日程
2019/4/21, 5/12, 6/16
曜日・時間
第3週 日曜 15:00~16:30
回数
3回
受講料(税込)
会員 9,720円 一般 11,664円
その他
教室は変わる場合があります。10階と11階の変更もあります。当日の案内表示をご確認ください。

講師詳細

松浦 壮(マツウラ ソウ)
1974年生まれ。京都大学で理学の博士号を取得後、素粒子物理学者として日本、デンマーク、ポーランドの研究機関を渡り歩く。2009年から慶應義塾大学商学部。専任講師、准教授を経て現職。研究の傍ら人文科学専攻の学生に物理学を講義。合気道四段。主な著書に『宇宙を動かす力は何か―日常から観る物理の話―』(新潮社)、『時間とはなんだろう 最新物理学で探る「時」の正体』(ブルーバックス)など。