原書でひも解くパーリ仏典の世界

  • 田﨑 國彦(仏教平和学研究所代表)
講師詳細

パーリ聖典、『相応部』「第12因縁相応」所収の第66経「探究(Sammasam)」〔SN. 12. 66, PTS ed., vol. Ⅱ, pp. 107-112〕を読解する。経名は、厳密には「内なる探究(antaraṃ sammasa[na]ṃ、対応漢訳は内触法)」であり、外部の物事に奪われがちな私たちのまなざしを内部へと反転させて、苦しみの原因・条件を順に連鎖的に明らかにしていく「内なる省察(内省)」と言える。
 ブッダは、経典の冒頭、比丘たちに「内なる探究をどう実践しているか」と問い、自らの探究を披露する(以下は要略)。「世間の人々において、老い・死・悲しみ・悩み・失望といった心身の苦がどのように生じ、また逆にどのように苦からの解放(解脱・涅槃)が生じるのか」という、恐らくは成道(覚り)以前からの〝自らの根本問題〟をとりあげる。世の中には、私たちにとって「好ましく心地よく思われる様々な物事(忌避したい物事も含む)」がある。私たちは、この物事をはかなく無常であり、苦(ストレス)であり、自己(アートマン)ではないもの(非我)であり、安らぎではなく恐怖であるなどと如実に知り見ることができない「無知」に覆われている。このとき、好ましい物事は、<渇愛>という強い欲求が生じて、とどまる場となる。この物事を私たちは<所有・獲得>する。<様々な苦>が生じてくる。<ta(渇愛)―upadhi(所有)―dukkha(苦)>という三つの支分から成る「いわゆる三支縁起説」である。この教説には、苦に至る道と同時に、無知から知へという苦からの解放に通じる〝もう一つの、オルタナティブな道〟が開けている。
 本経が説く「内なる探究」と名づける三支縁起説は、言わば縁起説の最古型、原型であり、難解な縁起説を譬喩(炎熱のために喉の渇いた者の話)を用いるなどして、具体的に実践的に、かつ分かりやすく説かれている。仏教を学ぶ者にとって、必読の経典である。Buddhaghosaの註釈、関連した内容を説く『大念処経』の四諦説、和辻哲郎『原始仏教の実践哲学』(全集第五巻)の研究なども参考にしながら、読解を進めていきます。読解経典の文法的説明などを記した【本資料】、英訳などの諸訳対照表と、パーリ・サンスクリット・漢訳の諸本対照表という二種類の【副資料】、および読解プリントを配布します。なお、パーリ語の辞書と文法書があれば、ご持参ください。

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注意事項

3/13休講→ 6/12補講を行います。既にお申し込み・ご予約頂いている方へは、葉書またはメールでご案内致しますのでご了承下さい。
■■新宿教室の休業にともない、4/17の補講は再度休講いたします。補講については決まり次第お知らせいたします。(※調整中のため、1/1は仮の日程です。)
新型コロナウイルスの感染拡大予防のため、3/13は休講、4/17に補講を行います。

日程
2020/2/14, 2/28
曜日・時間
第2週・第4週 金曜 11:45~13:15
回数
2回
受講料(税込)
会員 7,480円 一般 8,800円
持ち物など
<テキスト>プリントを教室で配布します。コピー代実費をいただくことがございます。(※恐れ入りますが、現金払いのみで承ります)。パーリ語の辞書と文法書があれば、ご持参ください。
その他
・教室は変わる場合があります。10階と11階の変更もあります。当日の案内表示をご確認ください。

講師詳細

田﨑 國彦(タサキ クニヒコ)
パーリ・サンスクリット・チベット「平和の文化」研究所(仏教平和学研究所)代表。武蔵野大学仏教文化研究所非常勤研究員、元明海大学非常勤講師、元東洋大学東洋学研究所客員研究員。社会学と仏教学を専攻。社会学の専門分野は、人間コミュニケーション論。仏教学では、原始仏教、倶舎論、サンスクリット文法、和辻哲郎、清沢満之、ダライラマ十四世、チベット問題、アウンサンスーチーなどに関する論文を発表。「パーリ仏典におけるattanの用法再考――再帰代名詞の観点から」(『宗教研究』90巻別冊)、「〈あるがまま〉を吟味する――原始仏教におけるyathbhUta︙の語義と用法に関する仮説」(『印仏研』42-2)、「仏陀との直接コミュニケーション――ブッダ(仏陀)観の変遷と見仏思想における『救済経験の構造』」(『超越と神秘』大明堂、所収)など。著訳書は、『ダライ・ラマ 他者と共に生きる』(共訳、春秋社)、『14人のダライ・ラマ』(上・下、共訳、春秋社)など。