川端康成とパウル・クレー

  • 「忘れっぽい天使」1939年
  • 富岡 幸一郎(文芸評論家・鎌倉文学館館長)
  • 新藤 真知(日本パウル・クレー協会代表)
講師詳細

かつて画家古賀春江を通じてパウル・クレーを知った川端康成は、晩年の名作『古都』の文中にクレーを登場させる。二人の接点は深いものではなかったが、それぞれに死と向かい合った練達の巨匠は、一方は「小説言語」の解体によって、また一方は「視覚言語」の解体によって異界への扉を開ける。(講師・記)

第一回(6月5日)『魔界の文学』
講師 富岡幸一郎 鎌倉文学館館長・文芸評論家
日本で最初のノーベル文学賞を受賞した川端康成は、新感覚派と呼ばれた大正期のモダンな文学の先駆者であった。代表作『雪国』は「この世ならぬ象徴の世界」をシュウルな文体で描いた作品であり、昭和30年に刊行された『みずうみ』は、迷宮としての魔界を舞台にした不思議な世界である。その文体は、パウル・クレーの「天使」の絵のように、時空間を自由に軽やかにはばたき往き来する異界への道へと読者を誘ってくれる。古今東西の芸術を愛した川端は、美のコレクターとしても傑出していた。

第二回(6月12日)『クレー〈天使連作〉の意味』
講師 新藤真知 日本パウル・クレー協会代表
今日、色彩画家として知られるクレーは、もともと線描の画家として出発した。優れたカリカチュア(戯画)の作家として身を立てることが若い頃の夢でもあった。晩年、不治の病を得て自己の死を予感したクレーは、テーブルに積んだ紙の上に自由闊達な線で次々に〈天使〉を描いては床に散乱させていったと伝えられている。

お申し込み
日程
2021/6/5, 6/12
曜日・時間
土曜 13:00~14:30
回数
2回
受講料(税込)
会員 6,600円 一般 8,800円
設備費(税込)
330円

講師詳細

富岡 幸一郎(トミオカ コウイチロウ)
1957年生まれ。中央大学文学部フランス文学科卒。在学中の79年、群像新人文学賞評論優秀作受賞、文芸評論活動を始める。近著に『天皇論 江藤淳と三島由紀夫』(文芸春秋)、『〈危機〉の正体』(佐藤優との共著、講談社)、『古井吉由論』(アーツアンドクラフツ)、『危機の時代の宗教論』(春秋社)など著書多数。現在、関東学院大学国際文化学部教授、鎌倉文学館館長。日本文芸家協会評議委員。
新藤 真知(シンドウ マコト)
1950年東京生まれ。1968〜69劇団四季演劇研究所で舞台芸術を学ぶ。画廊勤務を経て1973年に美術展プロデューサーとして独立、日本初のM.C.エッシャー展、エゴン・シーレ展、クリムト展などを手掛ける。1978年以来クレー家との親交を深め1997年に日本パウル・クレー協会を設立、近年は「バウハウス会議」(2015年、杭州)「クレー・シンポジウム」(2018年、ミュンヘン)など国際会議のメンバーを務めている。著書に『芸術の非精神的なことについて』(1995年、勁草書房)など多数。