「お嬢さまヒロイン」たちの苦闘 社会史から英国小説を再読する

  • 植松 みどり(和洋女子大学名誉教授)
講師詳細

 19世紀英国小説には、大英帝国として世界に進出していくイギリスの田園地帯に生活する普通の人々の姿がリアルに描きだされている。とくに、完璧なお姫さまではない中産階級の「お嬢さまヒロイン」たちの苦闘は、当時のイギリスの日常の姿を照らし出し、高邁な文学や歴史書には表現されてないその時代の記憶を浮かびあがらせている。英国小説を改めて社会史から読み取ることで、地域を越え時代を超えて命をつなぐ文学の楽しさを味わい、現代にもつながるイギリスのスピリットを見る。 (講師・記)

〈今回のテーマ〉ジェイン・オースティン『自負と偏見』
「一家存続への願い:長男相続制度とお嬢さまヒロインの奮闘」
イギリスの土地、財産相続の制度は非常に複雑に狡猾に作り上げられていた。細分化させずに一家が存続するようにと綿密な制度、法律が考え出されていた。その中でヒロインやそれを取り巻く人々はどのような闘いをして「幸せな結婚」を獲得したのだろうか。とても魅力的と呼ばれる女主人公、エリザベスの真実をそのような視点から読みとっていくとどのようなことになるのだろうか。

〈今後の予定〉
<夏学期>ジョージ・エリオット『フロス河畔の水車場』
:「細分化する中産階級(紳士階級)のなかの女主人公、マギーの苦闘」
近代市民社会が確立していく中、そこに現れた中産階級の人々。その活力がヴィクトリア時代(1837から1901)のイギリスの繁栄をもたらした一因でもある。地方の田園地帯に水車場を所有し、「製粉と酒造」を生業とする一家の娘マギーは、子供時代からその死に至るまで、当時の社会規範に従えない強い個性に苦しんだ。彼女を取り囲む一族の人々や恋人との間で苦悩するヒロインに、当時の「お嬢さまヒロイン」の縮図を見、また時代や場所を超えた文学の永遠のヒロインを見ていく。

<秋学期>トマス・ハーディー『テス』
:「制度への挑戦:愛人テスと “純粋な女(ピュア・ウーマン)” テス」
作者ハーディーは、生きていくため長女としての責任を果たすため愛人とならざるを得なかった美しいヒロイン、テスを “pure woman ”と副題で呼んだ。当時の英国の規範からは全く外れるヒロインを、どうして「純粋な女(ピュア・ウーマン)」と名付けたのだろうか。社会制度や規範に対抗する女主人公の苦闘とその悲しみを読み、当時のイギリス社会の問題を考え、時代を超え地域を超えての悲劇を見ていく。

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日程
2021/6/22
曜日・時間
火曜 13:00~14:30
回数
1回
受講料(税込)
会員 3,300円 一般 4,400円
設備費(税込)
165円
その他
教室は変わる場合があります。10階と11階の変更もあります。当日の案内表示をご確認ください。

講師詳細

植松 みどり(ウエマツ ミドリ)
1965年津田塾大学学芸学部英文学科卒業。同大学大学院文学研究科博士課程満期退学。日本ジョージ・エリオット協会会長を経て現顧問。日本ジェイン・オースティン協会理事。専門はイギリス文化・文学。特に近代英国小説を研究。
著書に『ジェイン・オースティンの「お嬢さま」ヒロイン』(朝日出版社)、『「ジェイン・エア」』と「嵐が丘」』(河出書房新社)(共著)『ブロンテ姉妹と15人の男たちの肖像』(ミネルバ書房)(共著)訳書に『エミリ・ブロンテ』(河出書房新社)『ブラック・ヴィーナス』(河出書房新社)。『狼と駈ける女たち』(新潮社)(共訳)、『嵐が丘』(学研)(共訳)など。