今だからこそロシアを知ろう! 九州大学大学院地球社会統合科学府提携講座
  • 教室開催

  • 松尾 晋一(長崎県立大学 地域創造学部教授)
  • 松枝 佳奈(九州大学地球社会統合科学府講師)
  • 高橋 沙奈美(九州大学人間環境学研究院講師)
  • 金山 浩司(九州大学基幹教育院准教授)
  • 佐藤 正則(九州大学言語文化研究院教授)
  • 松井 康浩(九州大学地球社会統合科学府教授)
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講師詳細

 ※教室で受講される方はこちらからお申込みください。
 ※1回ずつお申し込みをされる方はこちら。→https://www.asahiculture.jp/course/fukuoka/11fa0762-fbb6-484a-7ca5-6409ab1ede2e
 ※オンラインで受講される方はこちら。→ https://www.asahiculture.jp/course/fukuoka/c1429893-eb2f-38ae-4d2c-63ea0e43b521

 ウクライナへのロシアの侵攻が始まり約1年。戦争の終息もみえない現在、戦争の当事者であるロシアに対する社会の関心はいやが上にも高まっています。ロシアは、日本の隣国であるにもかかわらず、覇権主義で得体の知れない国家…、というような負のイメージで語られることが多い一方、その実態を知り得る機会もさほどありません。しかし、このような時だからこそ、隣国であるロシアについて知る必要があるのではないでしょうか。実は、九州大学にはロシア研究者が多く在籍しています。そのメリットを活かし、今回、本講座では歴史学、哲学、文学、科学、宗教学という多様な切り口から、ロシアの実像について鋭く迫っていきたいと思います。(各講座のタイトルは、いずれも仮題です。Zoomによる遠隔授業方式となる場合があります)

4/1・松尾晋一(長崎県立大学地域創造学部教授)「徳川幕府にとってのロシア問題」
 18世紀後半以降、ロシア船が日本近海に現れて日本へ通商を求める動きがみられます。しかし日本を開国させたのは、アメリカでした。これは1854年のことで、日本にとってはこの間立場を守れたことになりますが、ロシアの影響が何もなかったわけではありません。徳川幕府にロシア問題が何をもたらしたのか、考えていきたいと思います。

5/6・松枝佳奈(九州大学地球社会統合科学府講師)「文学・文化からみる日露・日ソ関係―明治時代から現代まで―」
 日本はロシア帝国やソヴィエト連邦とどのような文化交流を展開して、この北の隣国を理解してきたのでしょうか。先人たちのロシア・ソ連との関わりを比較文学や比較文化史の観点から知ることは、将来の日露関係を考える手がかりとなります。本講座では文学・美術・バレエなどに注目して日本側の資料や作品を読み解き、明治時代以降の両国の関係を考えていきます。

6/3・高橋沙奈美(九州大学人間環境学研究院講師) 「ロシア正教会と「ロシア世界」の文明観」
 ロシアにおけるもっとも優勢な宗教は、キリスト教の一つである東方正教です。ロシア、ウクライナ、ベラルーシは千年にわたって東方正教の信仰を共有してきたという兄弟神話がありました。ロシア正教会が掲げてきた「ロシア世界」の理念について、正教会の歴史、地理的分布、特徴などを紹介しながら検討します。そのうえで、宗教的側面から、ロシア・ウクライナ戦争について考えます。

7/1・佐藤正則(九州大学言語文化研究院教授)「西欧を超えるロシア―19-20世紀ロシア知識人の文明論―」
 近代から20世紀にいたるまで、ロシア知識人の間ではしばしば、西欧近代文明にたいする批判とともに、ロシアが西欧近代文明に代わる新たな文明を創造する担い手となるという思想が見られました。こうしたロシア思想における西欧近代の超克の理念の系譜をたどるとともに、その両面的性格や思想的意味について、現在の情勢をも視野に収めながら、考えます。

8/5・金山浩司(九州大学基幹教育院准教授)「ロシアとソ連とでは何が違うのか?―国際主義という切り口から―」
 戦時体制構築にあたって、イデオロギー的にもますます「内向き」志向――反西側、ロシアの伝統回帰――を深めつつあるように見える現プーチン政権ですが、ロシア史を見ると、必ずしもこうしたイデオロギーが常に支配的だったわけではありません。20世紀にロシアやその他の地域を支配していたソ連が掲げていた国是は、元来(内実は措くとして)、極めて国際主義的・未来志向的・合理主義的なものでした。その内容と、そのインパクト、そしてそれが適用されようとした際におきた現実のロシアの歴史的過程を見ていきましょう。

9/2・松井康浩(九州大学地球社会統合科学府教授) 「ソ連の異論派と西側市民の協働―揺らぐ冷戦構造下の越境的ネットワーク―」
 スターリンの死(1953年)、スターリン批判(1956年)を経て、モスクワを中心に、政府に異議を申し立てる市民・知識人が現れました。異論派と総称される人々です。この講義では、1960年代後半以降に本格的に登場するソ連異論派の人々と、それを支援した西側の市民・知識人のプロジェクトに光をあて、冷戦構造が緩む中に現れた体制・国境を越えた社会的ネットワークについて考察します。

 ★会場は、朝日カルチャーセンター福岡教室です。
 ※九州大学大学院地球社会統合科学府は、2014年に発足してすでに8年が過ぎました。2017年10月から朝日カルチャーセンターとの提携講座を開講しています。

この講座は、ご入会が必要です。会員でない方は、ご入会の手続きをお願いいたします。

お申し込み
日程
2023/4/1, 5/6, 6/3, 7/1, 8/5, 9/2
曜日・時間
第1週 土曜 13:00~14:30
回数
6回
受講料(税込)
会員 15,180円 
設備費(税込)
1,320円
持ち物など
筆記用具をお持ちください。

※設備費は、教室維持費です。

講師詳細

松尾 晋一(マツオ シンイチ)
1974年長崎県生まれ。九州大学大学院比較社会文化研究科博士課程単位取得退学。長崎歴史文化博物館研究員、長崎県立大学国際情報学部准教授、同大学地域創造学部准教授を経て、現在、同大学地域創造学部教授。博士(比較文化)。専攻は日本近代史で、主な著書として『江戸幕府の対外政策と沿岸警備』(校倉書房、2010年)、『江戸幕府と国防』(講談社、2013年)など。
松枝 佳奈(マツエダ カナ)
1987年福岡県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士後期課程修了。博士(学術)。現在、九州大学大学院比較社会文化研究院(地球社会統合科学府)講師。主著に『近代文学者たちのロシア——二葉亭四迷・内田魯庵・大庭柯公』(ミネルヴァ書房、2021年)、「森鷗外のロシア——『椋鳥通信』にみる帝政ロシアの政治と社会の問題」(『鷗外』111号、2022年)など。
高橋 沙奈美(タカハシ サナミ)
1979年生まれ。北海道大学文学研究科博士課程修了。日本学術振興会、北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターを経て、現在、九州大学人間環境学研究院講師。ロシア正教会と宗教文化財の問題、ニコライ二世をはじめとする現代の聖人、ウクライナにおける正教会の社会貢献活動など、 歴史認識と現代社会のかかわりから、ロシア・ウクライナ地域における正教会とその周辺の活動を研究している。著書に『ソヴィエト・ロシアの聖なる景観』(北海道大学出版会)、『宗教遺産テクスト学の創成』(共著、勉誠社)、『迷えるウクライナ 宗教をめぐるロシアとのもう一つの戦い』(扶桑社新書)など。
金山 浩司(カナヤマ コウジ)
1979年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。日本学術振興会、北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター等を経て、現在、九州大学基幹教育院准教授。1930―40年代のソ連・日本両国における科学論や技術論の論争史を研究してきている。著書に『神なき国の科学思想』(東海大学出版部)、共著に『科学の参謀本部』(北海道大学出版会)、『昭和後期の科学思想史』(勁草書房)、『ソヴィエト科学の裏庭』(水声社)など。
佐藤 正則(サトウ マサノリ)
1970年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士学位取得(博士課程修了)。現在、九州大学大学院言語文化研究院教授。1900-1930年代ロシア・ソ連の文化・思想、とりわけロシア革命期に生じた新たな人間観・世界観を研究している。主な著書として『ボリシェヴィズムと〈新しい人間〉』(水声社)、『モダンの身体』(小鳥遊書房、共著)、『ロシア革命とソ連の世紀 第4巻』(岩波書店、共著)など、訳書にボグダーノフ『信仰と科学』(未来社)。

松井 康浩(マツイ ヤスヒロ)